デジタル遺品の準備と相続:家族が困らないための5ステップと日本のルール
デジタル遺品で家族が困らないための準備をわかりやすく解説。アカウントの一覧づくり、Googleやアップルの死後の設定、パスワードの残し方、希望の書き方、日本の相続で気をつけたいネット銀行・暗号資産・サブスクまで。
20分で読めます執筆:Sealkept 編集部
このガイドの内容
スマホの写真、メール、ネット銀行、暗号資産、サブスク、いつか使うつもりで更新し続けているドメイン。私たちの暮らしの大部分は、いまやオンラインにあります。それなのに、そのほとんどには取扱説明書がありません。家や預金と同じように、デジタルの持ち物にも準備が必要です。そして多くの場合、家族がいちばん整理に苦労するのが、この部分です。
うれしいことに、しっかりした最初の一歩は一晩でできます。このガイドでは、デジタル遺品とは何か、デジタル終活の5つのステップ、日本の相続で気をつけたい点、海外のルール、そして必要なときに見つけてもらえる保管場所を紹介します。一般的な情報であり、法的助言ではありません。
デジタル遺品とは何か
オンラインで所有している、または利用しているもののすべてです。メール、クラウドの写真、SNS、ドメイン、ネット銀行・ネット証券、暗号資産、スマホ決済の残高、ポイントやマイル、サブスクリプション、そしてそれらを開くための端末。
いくつかのグループに分けて考えると整理しやすくなります。グループごとに、必要な指示の種類が違うからです。
- **鍵:**スマホ、パソコン、パスワード管理アプリ、そしてほかのサービスのパスワード再設定先になっているメールアドレス。家族がここに入れれば、たいていほかのものにもたどり着けます。
- **お金:**ネット専業銀行、ネット証券やNISA口座、スマホ決済の残高、暗号資産、価値のあるマイルやポイント。
- **思い出:**クラウドの写真ライブラリ、動画、ボイスメモ、ブログ、共有アルバム。
- **つながり:**SNSのプロフィール、個人のウェブサイト、友人が近況を探しにくるメッセージアプリのアカウント。
- **契約:**動画配信や音楽のサブスク、クラウドストレージの有料プラン、ソフトウェアのライセンスなど、クレジットカードへの請求が続くもの。
いちばん大切なのは「鍵」です。四十個のアカウントの一覧があっても、二段階認証のコードを受け取るスマホのロックを誰も解除できなければ、ほとんど役に立ちません。
デジタル終活の5つのステップ
しっかりした最初の形は、一晩でつくれます。デジタル終活チェックリストでも同じ手順を進められ、進み具合は自動で保存されます。
大切なアカウントを一覧にする
まず「鍵」と「お金」、次に「思い出」と「つながり」を書き出します。アカウントごとに、サービス名、登録しているメールアドレス、だいたい何が入っているかをメモしましょう。この一覧にはパスワードを書きません。金庫ではなく地図です。紙の書類も含めて整理したい方は、大事な書類の場所を家族に伝える方法も参考になります。エンディングノートにまとめてもかまいません。スマホ・SNS・サブスクごとの具体的な手順はデジタル終活のやり方で紹介しています。
Googleやアップルなどの死後の設定をオンにする
Googleの「アカウント無効化管理ツール」、アップルの「故人アカウント管理連絡先」、Facebookの「追悼アカウント管理人」は、どれも誰にアクセスを認めるか、何を削除するかを前もって決めておける機能です。主なサービスごとの設定の有無と場所は、死後のアカウント確認ツールで確認できます。
緊急アクセス機能のあるパスワード管理アプリを使う
多くのパスワード管理アプリでは、緊急連絡先を指定できます。その人がアクセスを申請すると待機期間が始まり、そのあいだにあなたは拒否できます。紙にパスワードを書いておくよりずっと安全で、パスワードを変えても自動で最新の状態に保たれます。くわしくは死後のパスワードを家族に安全に残す方法をご覧ください。最低限、スマホのパスコードだけは、信頼できる人に確実に伝わる方法を考えておきましょう。
希望を書き残す:削除する、追悼にする、引き継ぐ
大切なアカウントごとに、どうしてほしいかを書きます。通販サイトのアカウントは削除。Facebookのプロフィールは追悼アカウントに。写真ライブラリはダウンロードして妹に渡す。仕事用のメールは、取引先に連絡したあとで閉じる。具体的に書いておけば、家族は「本人ならどうしたかったか」と悩まずにすみます。
担当する人を決めて、本人に伝える
遺言執行者や、相続手続きを中心になって進める家族が担当することが多いですが、デジタルの部分だけは機械に強い別の人に頼む人もいます。誰に頼むにしても、その役目をお願いしたことと、一覧の保管場所を本人に伝えておきましょう。頼み方は遺言執行者の選び方で紹介しています。
日本の相続で気をつけたいこと
日本には、デジタル遺品だけを対象にした法律はありません。考え方は大きく二つに分かれます。
財産としての価値があるもの、たとえばネット銀行やネット証券の残高、暗号資産、スマホ決済の残高などは、通常の財産と同じく相続の対象になり、相続税の計算にも含まれるのが一般的です。問題は、通帳や郵便物がないため、家族が存在に気づけないことです。一覧に「どこに、どの口座があるか」だけでも残しておけば、手続きの漏れを防げます。
アカウントそのもの、たとえばSNSやメッセージアプリ、メールの利用権は、多くのサービスが規約で「本人限り」として譲渡や相続を認めていません。家族ができるのは、死亡を証明する書類を添えて削除や追悼アカウント化を申請することだけ、という場合が少なくありません。だからこそ、各サービスの死後の設定が大きな意味を持ちます。日本で特に利用者の多いLINEについては、LINEアカウントは亡くなったらどうなるかで整理しています。ポイントやマイルも、規約で死亡時に失効するものと、所定の手続きで引き継げるものがあるので、主なものは規約を確認しておきましょう。
遺言書にパスワードを書かないことも大切です。自筆証書遺言は、法務局に保管していなければ家庭裁判所の検認で相続人の前で開封されますし、パスワードを変えるたびに遺言書を書き直す必要が出てきます。遺言書には「ネット銀行の口座は長女に」のように財産の分け方を書き、ログイン情報はパスワード管理アプリの緊急アクセスなど別の方法で引き継ぎましょう。
サブスクの請求は、銀行口座が凍結されても、クレジットカードが解約されるまで続くことがあります。毎月の請求があるサービスを一覧にしておくと、家族は解約の手続きをすぐに進められます。
海外のルール(海外のサービスや海外在住の家族がいる場合)
GoogleやアップルなどのIT企業の多くは海外に本社があり、海外に住む家族や海外の口座がある方もいるでしょう。参考までに、主な国・地域の考え方を紹介します。
アメリカの多くの州では、RUFADAA(デジタル資産への受託者アクセスに関する改訂統一法)にもとづく州法が採用されています。誰の指示が優先されるかの順番は次のとおりです。
- **サービス側のオンライン設定。**Googleのアカウント無効化管理ツールやFacebookの追悼アカウント管理人など、サービスが用意した設定を使っていれば、遺言書より優先されます。
- **遺言書や信託などの書面。**オンライン設定を使っていなければ、遺言書などの指示が適用されます。
- **利用規約。**何も指示を残していなければ、登録時に同意した規約に従います。
この法律では、内容と**記録(カタログ)**も区別されます。記録とは、誰といつやりとりしたかという履歴、内容とはメッセージに書かれていることです。原則として、執行者が求められるのは記録やその他のデジタル資産で、メールやメッセージの内容は、オンライン設定や遺言書で本人が同意していた場合にだけ開示されます。
イギリスにはRUFADAAに相当する法律はありません。遺言執行者の権限は検認(プロベート)によって認められますが、オンラインのアカウントにアクセスできるかどうかは、主に各サービスの方針と利用規約で決まります。そのため、日本と同じく、死後の設定と書き残しが大きな役割を果たします。
EUのGDPRは生存している人を保護するもので、亡くなった人のデータの扱いは各国に委ねられています。たとえばフランスでは、死後の個人データの扱いについて本人が指示を残せます。ドイツでは2018年に連邦通常裁判所が、SNSのアカウントは手紙や日記と同じように相続人に引き継がれうると判断しました。それ以外の国では、多くの場合サービスの規約が決め手になります。
どの国でも、法律や手続きは変わることがあります。ご自身の状況については、その国の弁護士や公証人にご確認ください。
各サービスの死後の設定と、その限界
各サービスの死後の設定は、今日のうちにオンにしておく価値があります。無料で、数分で終わります。
- Googleのアカウント無効化管理ツールは、選んだ期間アカウントが使われないと、最大10人に通知し、選んだGoogleのデータを共有したり、アカウントを削除したりできます。
- アップルの故人アカウント管理連絡先は、指定した人にアクセスキーを渡しておく仕組みです。その人はアクセスキーと死亡を証明する書類で、あなたのiCloudのデータを申請できます。キーチェーンのパスワードや購入したコンテンツは含まれません。
- Facebookの追悼アカウント管理人は、追悼アカウントになったプロフィールを管理できますが、メッセージを読むことはできません。
ただし、どれも自分のサービスの外までは届きません。GoogleはGoogleのデータだけ、アップルはアップルのデータだけです。娘さんへの個人的な手紙や、相続手続きを担う人への「住宅ローンはこの銀行」というメモを届けてくれるものは、どれにもありません。個人的な手紙を届けるには、そのための仕組みが必要です。たとえば、あなたがチェックインをやめるまで手紙を封をしたまま預かるメッセージ用のデッドマンスイッチがあります。気持ちを伝える手紙を書くなら、家族に遺す手紙の書き方も参考にしてください。
一覧や指示の保管場所
今は誰にも見られず、そのときには見つけてもらえる場所が理想です。そう考えると、いくつかの定番の場所は向いていません。スマホのメモはスマホと一緒にロックされ、引き出しの中は最初に家を片付けた人に見つかり、銀行の貸金庫は名義人が亡くなると開けるのに手続きが必要になることがあります。
おすすめは、封をして信頼できる人や専門家に預ける方法、パスワード管理アプリの緊急アクセス機能、あるいは Sealkept の封をしたメモです。Sealkept のメモは、あなたがチェックインをやめ、指定した確認者と猶予期間を経たときにだけ届きます。保存時に暗号化され、あなたのルールでのみ届けられます。仕組みは信頼とセキュリティのページでくわしく説明しています。実務的な一覧と、それに添える手紙をまとめて預けたいなら、Sealkept はまさにそのために作られています。
どこに置くにしても、担当してくれる人に場所を伝えておきましょう。そして、大切な人を見送る側になったときには、身近な人が亡くなったときのチェックリストが最初の30日間の手続きを案内します。
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